ヴィーナスフォートに浮かぶ「空」と私の過去

 

ヴィーナスフォートの天井に描かれた「空」

 

1999年にオープンした

お台場のヴィーナスフォートが

2022年3月27日をもって

22年の歴史に幕を閉じます。

 

これは私にとって

とても感慨深いニュースでした。

 

実は、私は1999年に

このヴィーナスフォートの天井に

描かれた「空」と

仕事で関わった過去があります。

 

いまから遡ること23年前。

当時、私は米国ラスベガスのカレッジで

グラフィックデザインを学び

卒業後にそのままラスベガスで

グラフィックデザイナーとして

就職していた時期があります。

 

あれっ！？

今まで貿易一筋！なハズの

貿易戦略コンサルタントが

なぜかグラフィックデザイナー？？

はてな？が止まりませんよね（笑）

 

実は、卒業して最初に就職した

地元の小さな貿易会社で

商品を新たに生み出すという

企画開発の楽しさにどっぷりハマり、

クリエイティブな仕事の方が

自分に向いているんじゃないか…と思い

グラフィックデザインを学ぶために

20代半ばで思い切って留学をしたのです。

 

まぁ、途中でプロのデザイナーとしての

才能が自分にないことに気付き、

キャリアを軌道修正したので

今から思うと完全に迷走期ですが…（笑）

 

少し話が脱線しましたが、

そのグラフィックデザイナー時代に

１人の女性がオフィスを訪ねてきました。

 

その女性は、ラスベガスのストリップの

中心に位置する老舗ホテル＆カジノ

「シーザーズパレス」内に併設された

中世ヨーロッパの街並みを再現した

巨大な高級ショッピングモール

「フォーラム・ショップス」の天井に

「空」を描いたアーティストの一人でした。

 

当時からフォーラム・ショップスの

天井に描かれた幻想的な「空」は

とても有名でした。

24時間の空の移り変わりを

1時間で表現する不思議な仕掛けで

アメリカでとても人気がありました。

 

実は、お台場のヴィーナスフォートは

この「フォーラム・ショップス」をモデルに

造られているので、建築様式も雰囲気も

ビックリするくらいそっくりなんです。

 

 

 

その女性は、同僚のアーティスト達と一緒に

今度、東京に新しくできる

ヴィーナスフォートという施設の

天井にも「空」を描きに行くことになったから

日本語の名刺を作りたい

といってオフィスを訪ねて来たのでした。

 

今考えると、すごい方達から

仕事のオファーを頂いていたのですが、

当時、ラスベガスで日本語の

デザイン＆印刷ができる会社は

私が勤める会社のみでした。

 

だから、わざわざ探し出して

連絡してきてくれたのです。

 

そんな一流アーティストのリクエストは、

日本語の名刺に、「SKY」を

漢字でデザインして欲しいというもの。

 

SKYを日本語に訳すと「空」です。

だから私は、アーティストの名刺に

大きく「空」という漢字をデザインしました。

 

何度も打ち合わせを重ねて、

最終的な「空」のデザインが終わって

素敵な名刺が出来上がりました。

 

が、フッと思ったんです。

確かにSKYは「空」なんですが、

EMPTY（空っぽ）も全く同じ「空」の

漢字を使うということを。

 

明確にSKYを表現するには

「大空」とデザインした方が

本当は良かったのかも知れない。

 

ただ、デザイン的には

「空」と一文字の方がスッキリして格好いい。

でも、SKYとEMPTYは全くの別物。

SKYの意味を強調するには「大空」

にすべきだったか…

 

迷いに迷い、最終的に「空」に決めました。

 

ですが、実は23年経った今でも

どっちが正解だったのかは

未だに自分の中で答えが出ておらず、

もしかすると、もっと他に良い表現や

選択肢があったのかも知れない…

と、今考えても、悶々としてしまいます。

 

ただ、この大事なポイントを突き詰めずに

デザインを仕上げたことは

クリエイティブで勝負するデザイナーとしては

本当に未熟だったと思います。

 

それでも、デザイナーとして

当時駆け出しだった私を信頼して、

美しい空を描く素晴らしい

アーティストから仕事を依頼していただき、

少しでもお仕事に関わり

お役に立てたことは今でも私の誇りです。

 

名刺が導いてくれた

素晴らしいアーティストとの出会いと

ヴィーナスフォートの「空」との繋がりは

23年経っても鮮明に記憶に残る

大変貴重な経験です。

 

そして今日、閉館前に最後にもう一度

ヴィーナスフォートの「空」が見たいと

思い立ち、訪れたのですが、

天井に描かれた幻想的な空を見上げると

やっぱり、いまだに「空」で悶々とする

自分がいます（笑）

 

 

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少しでも、私のように

あの時こうしておけば良かった…

本当はこっちが正解だったのかも…

と何十年も悶々とすることになるかも

知れない方のお役に立ちたいと思います。

 

 

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