対韓国への輸出規制は本当に経済報復なのか?

7月4日より、いよいよ日本政府が韓国に対する半導体などの材料(フッ化ポリイミド、レジスト、高純度フッ化水素)3品目の輸出規制強化が始まりましたね。

巷のメディアでは、「日本の経済報復」や「事実上の禁輸」という言葉が飛び交っていますが、果たしてそうでしょうか?

今回は、輸出管理に焦点を当ててこの問題を紐解いてみたいと思います。

 

「輸出規制を発動」という表現が誤解を招くのだと思いますが、そもそも今回の「輸出規制強化」は、韓国に対して新たに規制を設けるものではありません。

 

昨今、北朝鮮による核ミサイルの保有や、テロリストによる事件等にも見られるように大量破壊兵器や武器・弾薬などの拡散は大きな国際問題となっています。

 

こうした中で、国際的な平和及び安全の維持を妨げる大量破壊兵器や武器・弾薬の開発や製造に関連する資機材や関連汎用品の輸出や関連技術の提供について、外為法に基づいて管理する輸出貿易管理令という法律が存在します。

 

輸出貿易管理令は、大量破壊兵器や武器・弾薬の開発や製造につながる恐れがある具体的な品目をリスト化して規制する「リスト規制」と、リスト以外の品目ではあるものの大量破壊兵器の開発等に用いられる「可能性のある」全ての貨物や技術をまとめて規制する「キャッチオール規制」の2つで成り立っており、規制対象の貨物や技術を輸出する者は規制内容を確認(該非判定)する必要があります。

また、規制品目に該当する貨物や技術を輸出する場合は、経済産業大臣の許可または承認を受ける必要があります。

 

この中で、「キャッチオール規制」に該当する品目に対し、本来は輸出の契約ごとに「個別許可」が必要なところ、ホワイト国向けの輸出に限定して、「包括許可」による手続きの簡略化を認めている優遇措置となります。

 

ちなみに、ホワイト国とは、日本と同じように「キャッチオール規制」を導入していて、輸出管理を徹底している国々です。現在、日本が特別に優遇しているホワイト国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、イギリス、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、スイス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、韓国(除外予定)の27ヵ国です。

日本がアジア諸国の中で「ホワイト国」と認めた国は韓国だけであり、また欧州諸国はどの国も韓国を「ホワイト国」と認めていません。

 

ホワイト国の認定はあくまでも国と国の信頼関係を基礎としています。

今日までの日韓関係の悪化に加え、韓国は武器輸出禁止国に指定されている北朝鮮と取引をしている可能性が非常に高いため、日本が韓国をホワイト国から除外し、輸出管理を強化することは安全保障上当然の措置と言えそうです。

 

つまり、韓国をホワイト国から除外すると言うことは、「キャッチオール規制」に該当する品目の輸出に際し、今まで特別に優遇していた簡略手続き(包括許可)を本来の手続き(個別許可)に戻すものですのであり、そもそも「経済報復」とは全く意味合いが異なります。

そして、日本が韓国だけを対象にある特定の品目を禁輸することも基本的にはあり得ません。

しかしながら、ホワイト国からの除外により、今後は今回の輸出規制強化の対象となった3品目に限らず、「キャッチオール規制」に該当する全ての輸出品目に規制強化の対象が拡大することを理解する必要があります。

 

今後、海外市場へ展開して行かれる企業様におかれましては、国家間の政治的、経済的、文化的な情勢を常に冷静に分析し把握することで、問題の本質を理解し、早い段階で適切な対応&リスク回避をして頂きたいと思います。

 

韓国輸出規制、リスト規制、キャッチオール規制