該非判定の実務の流れ
すぐ分かる!該非判定の実務の流れ
前回は、貨物や技術の機能や性能(スペック)に着目した「リスト規制」と需要者や用途に着目した「キャッチオール規制」の該非判定の概要についてご紹介致しました。
今回は、実際に輸出をはじめる前に該非判定をどのような手順で行うのか実務レベルのお話しをさせて頂きます。まず、該非判定の全体的な流れとして、輸出する貨物や技術が
① リスト規制に該当するか否かを確認する
② 使用用途がキャッチオール規制に該当するか否かを確認する
③ ①や②に該当する場合は、原則輸出前及び技術提供する前に経済産業大臣の許可を受ける
輸出する貨物や技術がリスト規制に該当するか否かの判断は、
① 輸出貿易管理令別表1をくまなくチェックする
② 用語索引集で調べる
③ 経済産業省のウェブページを活用するなどして確認する
特に、法令等で規制されている貨物の名称は、必ずしも一般的に使用されている名称と同じとは限らないので注意が必要です。例えば、「インバーター」を該非判定しようとしても別表1には存在しませんが、2の項に「周波数変換器」という名称で規制されています。また、複数の項番で規制されていることもあります。更に、部分品や付属品も規制の対象となっている場合がありますので、解釈も含めしっかり輸出貿易管理令別表1をチェックしましょう。
キャッチオール規制の対象品は、リスト規制対象外のもので明らかに大量破壊兵器の開発に用いられないものを除き全ての貨物と技術となっています。また、許可が必要な条件は、
① 輸出者による判断(輸入者の最終用途が大量破壊兵器の開発かどうか、最終輸入者が開発を行っているかどうかを確認)
② 経済産業省の判断(経済産業省から許可を取るように通知を受けた場合)
となります。ちょっと驚きませんか? 明確に項目が一覧化されているリスト規制とは異なり、キャッチオール規制は大量破壊兵器の開発等の可能性があるものが対象となっており、つまり明らかに関係のない食料品や木材等の一部を除いた殆ど全てものが対象となると言う、何ともあいまいな規定となっています。ただ、基本的には「輸出者の判断による」となるものの、判断に対して当然責任が問われますし、企業のリスク管理への取組みが問われます。該非判定の際には、大量破壊兵器の開発等に用いられる恐れが強い貨物40品目や開発等への関与が懸念される企業・組織を掲載した外国人リスト等を活用し、判断に迷った場合は、必ず経済産業省安全保障貿易審査課に相談することをお勧めします。
該非判定の結果、許可申請が必要となった場合は輸出貿易管理令別表1や外国為替令の該当項番ごとに提出書類の種類や申請窓口(経済産業省安全保障貿易審査課または経済産業局)が異なります。提出書類の書式のダウンロードや申請窓口の詳細は経済産業省安全保障貿易管理のウェブサイトより確認できます。(http://www.meti.go.jp/policy/anpo/apply10.html)
また、リスト規制に該当しない場合は許可申請不要ですが、輸出に際し税関より該非判定を適切に行っているか確認するために判定根拠や結果を求められる可能性があります。その場合は、規制に該当しない旨を示す該非判定書と根拠となる資料を共に提供する必要があります。該非判定書に記載する内容は以下の通りです。
① 判定対象貨物が特定できる名称や型式
② 判定の根拠とした法令等(政令や項番、省令番号)
③ 判定結果や判定根拠
④ 判定の結果、貨物や技術がリスト規制の1項~15項に該当せず、16の項(キャッチオール規制の確認対象貨物)に該当する旨を明記
⑤ 宛先(発行先)
⑥ 作成した年月日
いずれにしても、しっかりと調査&判定をし、あらゆる状況に備えることをすることをお勧め致します。
自分だけが扱える海外商品の直接取引をコーディネートする貿易戦略コンサルタント。
中小の専門商社及び輸入車インポーターにて20年間に渡り、15ヵ国・100社以上の海外企業との交渉や売買・独占販売契約の締結、貿易実務、国際物流など海外業務全般に携わる。また、米国ラスベガスでの就労経験も持つ。
言語の壁、貿易の経験や知識不足等により海外ビジネスに積極的に取組めない中小企業が商社に頼らず、直接取引を実現するための支援サービスを提供している。
2019年4月より(公財)横浜企業経営支援財団にて横浜市企業のための国際ビジネスマッチングや海外展開も支援中。
2020年4月より(一社)Glocal Solutions Japan 認定専門家 「貿易戦略コンサルタント」として活動中。